東京高等裁判所 昭和38年(ネ)1755号 判決
成立に争のない甲第二号証、同第三号証の一、二、当審証人高橋政勝の証言、原審における控訴会社代表者本人訊問の結果(一部)とこれにより真正の成立を認める乙第一号証によれば、控訴会社は、昭和三十六年四月二十九日訴外高橋政勝に本件中古自動車、すなわちSKB型五十六年式「トヨペツト」車輛番号4な六一二七を代金十万五千円、これに金利と自動車損害賠償責任保険の保険料を加算した金額を十回に分割弁済を受けること、右金員完済まで自動車の所有権を控訴会社に留保する約旨で売渡し、高橋は右自動車の引渡を受けてその後毎日控訴会社営業所に出向き、その都度控訴会社の指示を受けて控訴会社の契約した得意先の三越、松屋、松坂屋、西武等のデパートや田中運送店等に赴き、右自動車を使用して荷物の配達をしていたこと、控訴会社はこれらの得意先から一時間につき三百円ないし三百五十円で荷物の運送を請負い、請負代金は直接これを取立て、高橋に対しては一時間当り二百五十円の割合で計算した金額から右月賦金、使用した「ガソリン」代等を控除し残額を交付していたこと、高橋の買受けた右中古自動車の代金額は市中の販売価格より遙に高いものであつたこと、控訴会社は所属の他の自動車運転手に対しても、すべて右のような使用方法をとつていたこと、高橋は控訴会社より身分証明書の交付を受け、右自動車の検査証は控訴会社を所有者兼使用者、使用の本拠を使用者控訴会社の住所として東京都知事から発行されていたことが認められ、又当審証人岩田博、高橋政勝の各証言によれば、訴外岩田博が右自動車を運転して本件事故を起した経緯は、高橋が予期に反する不利な条件に嫌気がさし、右月賦金を完済しないまま同年八月頃から控訴会社に出向することを止めたところ、訴外沢田某が岩田博を帯同して高橋を訪ね、同人に肩替りして右自動車を引取り岩田をして控訴会社の前示運送業務に従事させ度い旨を申入れ、高橋もこれを承諾して本件自動車を沢田に引渡したこと、右岩田は、沢田が控訴会社との従来のいきさつから自己の名義を表面に出すのを避けたため、高橋の代理者の形式で同年九月六日以降控訴会社に出向し、その指示を受けて本件自動車により高橋と同様に東横、上野松坂屋等の「デパート」の荷物の運搬に従事していたこと本件事故は、前日岩田が修理のため持ち帰つた本件自動車を格納場所である控訴会社営業所に運ぶべく、空車のまま運転中に惹き起されたものであることが認められ、以上の認定に反する控訴会社代表者本人訊問の結果は採用し難い。
以上の認定事実によれば、高橋も岩田も控訴会社の指揮を受けて同会社が他から請負つた物品運送の業務に従事したものであり、控訴会社は岩田等の右運送により経済的利益を享受していたものであるから、控訴会社は自動車損害賠償保障法第三条にいう自己のために自動車を運行の用に供するものに該当し、本件はその運行によつて他人の生命を害したときに該るものと認めるべきである。
(小沢 仁分 池田)